ちょっと議論があったので。
過去に何度か言っているように、私、
ルチル入りじゃないものをルチルクォーツとか、
○○ルチルと呼ぶのはおかしいと思ってます。
黒トルマリン入りがブラックルチルと呼ばれている例は、多すぎていちいち訂正するのも嫌になりますが、少なくとも
売り手が、中身がトルマリンだとわかっていながらそんなことを言っちゃあおかしいでしょうと思います。
ルチル、トルマリンと言う名前を使うからややこしいのであれば、
水晶=パン
ルチル=餡
トルマリン=ジャムに置き換えると話は簡単です。
餡入りだからアンパン、ジャム入りだからジャムパン。
これ、あたりまえ。
外からでは中身がわからなくて間違えてしまったというならわかるけれど、
「中に入っているのはジャムだけどアンパンです」
と言われたら、誰だっておかしいと思いませんか。もうちょっと例をくわしくしますと
水晶=パン
内包物入り水晶=中身入りパン(餡やジャム以外に甘くない惣菜含む)
針入り水晶=お菓子パン(甘い中身入り)
……ということになります。
つまり、パンというジャンルの中に中身入りパンがあり、甘い中身入り菓子パンは中身入りパンの中の一部。
甘い中身には餡やジャムのほかにクリームやピーナッツバターみたいなのもあるわけで、餡は甘い中身の中のさらに一部位置づけです。
赤ルチルや金ルチルは、鶯餡や黄身餡みたいなもので、餡の中のバリエーションである……と。
で、中身がトルマリンなのにルチル入り水晶だ、これは流通名でそれで流通しているからそれでいいんだ……というのは、
トルマリンとルチルという、甘い中身一お菓子パンのふたつをごちゃ混ぜにしているだけでなく、
一段大雑把な分け方である「お菓子パン(甘い中身入り)」と餡をいっしょくたにしているということです。
そこには、「どっちもどろっとしてて、甘いんだから細かく言わずに全部餡でいいじゃ~ん。(その方が高く売れるし)」という意識が透けて見えそうです。
「流通名だから」それでいいといえるでしょうか?
「針状の内包物の総称がルチルです」なんていい加減な説明をパンのたとえにあてはめると、
甘い中身(どろっとした甘いもの)は全部「餡」。
朝食でパンに塗るのも餡。
(名古屋では餡トーストと言うのがあって、あれはあれでおいしいと思います)
シュークリームの中に入っているのも餡。
ケーキをきれいに仕上げているのも餡。
……と言ってしまうということです。なんだか……ものすご~く違うと思いませんか。
それが業界のやり方なんだ!……というなら、
そんなやり方を消費者に押し付けないでいただきたい。ちゃんとした説明もあり、ルチルで調べれば「金紅石」が出てくる。
アンパンと言う名前なら中身が餡であると期待するのと同じように、ルチル
入りだからルチル(金紅石)が入っているんだろう……それが
普通の解釈です。
「ルチルと言われたからルチルと思っていたのに違うの!?」
……と
がっかりする人がいる以上、針状内包物をルチルと総称するのは正しいとは言えません。何より、
ルチルには「針」とか「針状内包物」という意味はありません。語源を言うならラテン語のrutilus(赤)(←鉱物の語源で調べるとこう出てくるんだけれど、ラテン語で赤を調べるとrufus。rutilusは「ruddy(赤らんだ、血色がよいあるいは赤に近いオレンジ)」の意味らしい。とにかく金紅石の「赤」を表したのだろう)
「アメジストやスモーキーに金色のゲーサイトが内包されたものがカコクセナイト」と宝石宝飾大辞典に書いてあるそうですが(
実際確かめたことはありません※追記:確認しました。書かれてました。(2011・9・30))、同じように「針状内包物をルチルと呼ぶ」とどこかに書かれているのでしょうか。
だったら、
大迷惑。「金色ゲーサイトがカコクセナイト」と鉱物のカコクセナイト、「針状内包物がルチル」と鉱物のルチルをどう整合性を付けるのか、その説明を聞いてみたいです。本気で。
(「宝飾大辞典」なので、
宝飾の分野では、ということなのかもしれません)
(鉱物としての)カコクセナイトはどう転んでも単体では宝石になりえない石だし、水晶に内包されても目立たないと思いますが(本当に内包されることがあるのか疑問視する声も)、ルチルはそうはいきません。単体で宝石にもなりえるし、(ルチルだけなら)合成もできる、ルチル入り水晶をルチルと略したために、ルチル単体なら合成できる→合成ルチル(入り水晶)があるという誤解が生まれたくらいです。(
参考サイトさま……合成ルチルのルース:ページ一番下)
「宝飾品の世界では」というなら、それを鉱物用語も入りまじるパワーストーンの世界にそのまま持ち込むのが適切かどうか。ブラックルチル(トルマリン)と書いているからいいじゃないか?あいにく、全然いいとは思いません。実際混乱してる人はいますから、長くなろうと何だろうと、ちゃんと説明して、
トルマリン入りならトルマリン入りと呼ぶべきです。
ルチルがトルマリンと同じように鉱物名である。それすら説明してなくて、ルチルが針入り水晶の総称だなんて言ってるくらいでは、混乱はなくならないでしょう。
ルチルやアクチノライト、トルマリンを区別するのは鉱物的な話である。……鉱物名を使うなら、その分類に従うのはある意味当たり前。 ことさらに難しくしなくても「ルチルという
もの」が入ってる「アクチノライトという
もの」が入ってる。似ているけれど二つは違うもので、こっちはアクチノライト。
ルチルが金紅石でTiO2で、アクチノライトは緑閃石でCa2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2 (Mg/(Mg+Fe)=0.5-0.9) で……なんてことはとりあえず必要ないです。
そういう「もの」で、似て見えても二つはとにかく別物だということで、話は立派に通じます。
専門的なことを一般の人に言ったってわからないだろう。だから業者側で優しく言ってるんだということを言った人がいますが、
大きなお世話。こっちは、堂々の一般人ですが、ちゃんとわかりますぜ。
ごちゃ混ぜにして話をややこしくしておいて、一般人にはわからないだろうというのが理由になるものですか。
餡やジャムとちがって、見た目で判断が付けられない、いちいち鑑別なんかしてられないというなら、「黒針」「緑針」という、便利な呼び方があるじゃあないですか。
それに、ルチルではっきり緑やはっきり青はないんだから、見るからに緑や青の針状内包物ならルチルではないという判断はつくはず。
そういうものまでぬけぬけとルチルと呼んでしまうのは、納得できません。
鉱物的なうんちくだと嫌う人がいますが、こんな程度の
どこがうんちくであるものか。
言い換えれば、最初に例に挙げたように、
アンパンとジャムパンは違うだろう!……というのと同じです。 少なくとも、
「中はジャムだけどアンパン」と言われたら、どんな素人だって「え?」と疑問に思いませんか。
それとも「中はジャムだけどアンパン」に「え?」と言うのは、パン職人の細かなこだわりだとおっしゃいますか。
このように、流通名だからそれでいいという売り手には一言申し上げたいのですが、この際、
買う側にもひとこと。こういう話をすると、「鉱物の話だから……」「議論じゃなくて、意味や効果があったという話をしたい」という人がいます。
そりゃ、だれだってとげとげした議論より楽しくおしゃべりできた方が楽しいに決まってますが、パワーストーンでは「これ、偽物のでしょうか」とか「石の意味は」と気にする人はたくさんいますよね。
○○石と言う名前で買ったけど、それではなかった……それは、「偽物!」といわれないでしょうか?
見た目が同じだから同じ名前で呼んでもいい……じゃあ、ガラスを水晶と読んだらどうでしょう?
「ルチルという名前で売られていたんだからルチルでいい」……じゃあガラスである「練り水晶」はどうです。水晶と名前がついているから水晶なんだ。チェリー・クォーツは人工ガラスだけど、クォーツと名前がついているから水晶と同じでいいんだ……その説明ですべての人が納得するでしょうか。
トルマリンでもなんでもいいじゃない……そんな人でも「合成ルチル(入り水晶)が発売されたんだって!注意!」といううわさが流れたら、どきっとしませんか。
一方で偽物を気にしながら、一方でどうでもいいという。
石の種類で意味を分けて、その意味を気にしながら、石の種類には無頓着。
それではちょっと違うと思うんです。
それに、有名なヒーラー(たとえばジェーン・アン・ドゥ氏)も著書の中でルチル入りとトルマリン入りを分けてます。
一方でこういったヒーラーが着目した石に興味を示しながら、一方ではルチルでもトルマリンでもべつにいいや……でいいんでしょうか。
意味を大切にするにしても石の区分けは必要で、石の判別に鉱物名を使うなら、いちおうは鉱物の分け方に従う。
必ずしも鉱物に詳しくある必要はないけれど、「中はジャムだけどアンパン」みたいな筋の通らないことには「え?」と疑問を持つ。
それくらいは必要ではないでしょうか。
ああ、私は石頭。