
ブラジルはトマスゴンサガ産の水晶です。
私がこの産地の水晶を買ったのは
2011年7月。
この時点で「しばらく前からよく目にする」とか言ってますから、水晶の産地として耳にするようになって、まだ新しめ……だけど検索すると「産出量が激減して幻の水晶になるかも」とかいう説明をみかけます。
石屋さん曰く、以前からここでは透明な水晶が出ていた」とのことなので、私が知ったのが最近なだけなのでしょうか。
……まあ、ことブラジルの水晶で「もう採れない」はあんまりあてにならないんですけども。
たとえば、レムリアンシードもインディゴライト入り水晶も「もう出ない」と言う話を何度もききましたが、ちょっとずつタイプを変えながら今でも見かけます。
ご覧の通り透明で、これぞ水晶と言いたいスタンダードな感じ。
申し訳ないけど、変な形や内包物好きの私にとっては、きれいではあるけど「透明だったら他にもあるじゃん」……な感じでさほど興味をひきませんでした。
しかし……
このたび、その認識が一変!やばい、この産地の水晶をしばらく追いかけそう……。
先だって某店の即売会で、トマスゴンサガの透明水晶がいくつも売られていました。
透明で内包物もないけど、面白い形があるかも。
……と、一つ一つ手に取ってつらつら眺めていると。
おや?
虹?錐面の一部に、虹。
水晶に虹が出るケースは幾通りかあります。
ひとつはクラックに虹。
これはよくあります。結晶内部の深いところに出るし、見ればわかります。

もう一つは、酸化被膜……要するに天然アクアオーラ。
これは、水晶の表面に虹が出ます。

そして、インドのレインボー水晶。

これも表面に虹……に見えますが、実は内部にファントム状に虹が出ます。
今回見つけた虹は、水晶表面に見えました。
ということはクラック虹ではない。もちろんクラックも見えません。
では、残り二つか。
でもこれはブラジル産水晶で、インドではないし、インドのレインボー水晶はつくつくタイプのアメジストみたいな水晶です。
今回の水晶とはタイプが違う。
酸化被膜の場合は、表面がコーティングされているため、どうしてもややマットめの質感になりがちです。
たまにピカピカのもありますが、酸化被膜虹は場所を問いません。錐面も柱面も虹になります。
だけど、今回のは錐面だけ。
表面もピカピカです。
酸化被膜虹なら、虹が出ている部分と出ていない部分の境目はあいまいだけど、これはくっきりしているようです。
それに……わずかに虹が内部に入っているように見える。
見つけた水晶を握りしめ、会場の照明で照らして虹を覗き込み、唸ることしばし。
そこへ、別の石屋さんがやってきました。
イリス・アメジストを扱っているお店の人です。
そういえば、あれはひびでも被膜でもない虹だっけ。
「ちょっとおかしな虹があるんです」
と声をかけてみていただくと
「うん、イリスアメジストと同じ虹じゃないかな? 透明水晶に出るのは珍しいね」
おお!
イリス・アメジストと同じとな?
ええーと、イリスアメジストは、内部に微細な層状構造があって、割れた破断面や結晶が外れた剥離面で、その層状構造が露出し、ちょうどCDの表面のような状態になって虹が見えるとかなんとか。(あんまり理解できてない私……汗)
※ミネラ28号にイリスアメジストが紹介されていて「表面特殊構造により光が分光され虹が確認される」「微細格子状構造が推定されますが詳細確認はできていません」とあります。「面白いから、持っといた方がいいよ」
もちろん! こんな面白いものは逃すわけにはいきません。
さっそく買って帰ってみてみると……
見えない。この虹、蛍光灯程度の光では見えません。
ペンライトでかろうじて……見えることは見えるけど、光源が近すぎて写りこんでしまい、見にくいです。
そわそわしながら晴れの日を待ち、マクロレンズで迫ったのが昨日。
その写真がこれ。
※大きい写真なので右側が切れています。画像をクリックすると全体が象が表示されます。

角度が変わると色が変わります。

さらに、
どん。
いやもう、ラブラドライトなどと違って、ちょっとでも角度がずれたら見えなくなるか、真っ白に光を反射してしまう。
微妙な角度なので、左手に石、右手にカメラ、窓辺で直射日光をあてつつ腕をプルプルさせて撮りました。
マクロで迫っているのでこのような細かいところまで撮れましたが、肉眼ではまさしく一瞬、石の表面に虹が浮かんで消えてしまう……そんな感じです。
それにしても、何でしょう、この虹。
本当にCDの表面のように細かい筋状になって見えています。
想像するに、これはレコードキーパー(成長丘)が絡んでいるんじゃないか。
上から2番目の写真にうっすら写っていますが、この石、虹のでる錐面には大きなレコードキーパーがあります。
レコードキーパーは、水晶が成長していくときに現れることがある「成長丘」と呼ばれるもので、たいていは凸上の三角形をしています。
小さい三角形が無数に重なることもあるし、大きな三角が一つ……何重にも重なっていることもあります。
こんなふうに。

これは別の石で、虹は出ませんが、レコードキーパーが無数に重なった筋の様子がよく似ています。
この筋は、ひっかいた溝状のものではありません。細かな細かな階段状になっている……つまり、そこには微細な層状構造があるはず。
その層の厚みが偶然虹が出る厚みになっていて、レコードキーパーがわずかずつずれていることで、そこがCDの表面と同じような状態になったのではないか。
そのように想像しています。